大正十年八月二十一日、尾木徳太郎という人が「日本童謡協会」
という会を作りました。
そして北原白秋、西条八十、野口雨情、三木露風をはじめ、
山田耕筰、本居長世、近衛秀麿、弘田龍太郎それに画家の
岡本帰一までを顧問に戴き、大正十四年十二月までに
「童謡」という雑誌を第九輯まで出しています。
会の名前が「日本童謡協会」で、出している雑誌が「童謡」
というのはちょっと変な感じですが、今日の日本童謡協会
とは関係ありません。
この雑誌はその後、昭和八年五月に復活号を出し、つづいて
六月号が出ていますが、それからどうなったかよくわかりません。
この「童謡」の第九輯にめずらしい童謡が出ています。
「ドンの歌」というのです。
おけせうするなら
ドンでけせうなされ
ドンはおけせうの女王さま
ドンはおけせうの女王さま
花のすがたは
ドンのけせうすがた
ドンはおけせうの女王さま
ドンはおけせうの女王さま
作詞は野口雨情で、作曲は萱間三平です。
ご覧の通り「ドン白粉」のCMソングです。
雨情は頼まれると断れない人だったから
こんなCM童謡も作ったのでしょう。
萱間三平というのは中山晋平です。晋平は
その頃小学校の先生だったので学校に遠慮して
この変名を使ったのです。